アイシネンと防音

2006.04.30

最近は設計事務所さんの物件で屋根をガルバー鋼板で設計されることが多く、屋根の断熱とともに、防音効果に注目されアイシネンを採用されることが多くなりました。
アイシネンはご承知のとおり、オープンセル(気泡が独立せず、気泡の壁が一部開いていて、隣接している気泡とつながっている)構造のため、遮音、吸音特性がよい。ただ居住空間の全体の音に関しては、建物の構造の影響や隙間対策がどこまで出来ているかでかなり違ってくる。つまりアイシネンだけで家全体の性能を決める事は出来ません。よく質問を受けるのが「2階の床からの衝撃音が取れるか?」というものです。

一般の常識として、質量の小さい発泡体などは低周波の衝撃音を遮音することは困難です。特に125ヘルツ~250Hz領域の遮音あるいは吸音は大変難しい。従って床材の裏に溝を切り空気層を作るなど工夫をするか、質量の大きいもの(鉛が代表)あるいはカーペーットなどを併用することが必要でしょう。アイシネンも例外ではありません。

音には空気が振動して起きるものと固体(躯体)を伝わるものと大きく別けて2種類あります。アイシネンは空気を伝わってくる音を遮断したり、吸収したりします。専門語で表現すると透過損失は37dB(平均)、吸音率は平均で70%です。ただ一般の発泡体に比較すると、特に生活音の500ヘルツ領域、さらに1000~4,000Hzの高周波領域の吸音率が良いとの評価を受けています。これは気泡の構造によるものと判断できます。実際に、アイシネンを施工した床で衝撃音(業界ではタッピングテストで評価する)を具体的にどこまで落せるかは、床の構成により違ってくるので、実測をせねばならないのです。住宅兼オフィスの2階の床で実際に測定したことがありますが、やはり125Hz~250Hzはほんの僅かの効果でした。

今一つ、躯体を伝わる間接音(専門的にはフランキング音と言いますが)を遮断することもなかなか難しい問題です。ただ構造に隙間があり、そこからの空気振動で発生する音(低周波を除く)は隙間を充填することでかなり改善できます。
とにかく、音源に近いところで遮音すること、将来にわたって隙間が発生しないことで生活音(一番気になる夜中の電話などの話し声)や雨音・TVの音などには効果大です。いずれにしても、クライアントの要望によりいろいろな材料・構造の組み合わせで対応すること大切です。


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